1級建築施工管理技士の経験記述の書き方|例文暗記が通用しない新形式を”型”で攻略する

一級建築施工管理技士の二次検定で、最大の壁が経験記述です。

ヤマダ

受験当時で現場監督歴は10年を超えていましたが、この経験記述で一度落ちています。

当時の敗因は「何を書けばいいのか分からない」こと。その後、書き方の”型”を手に入れて合格しました(詳しい経緯は勉強法の記事に書いています)。

この記事では、その型の中身を具体的に解説します。あわせて、令和6年度から経験記述の形式が変わり、例文の丸暗記という従来の定番対策が通用しにくくなった理由と対策も整理します。

※なお、受検申請時に提出する「実務経験証明書」の書き方を探している方は、この記事の内容とは別物ですのでご注意ください(願書の書き方は別記事で扱う予定です)。

目次

経験記述は「作文」ではなく「翻訳」である

まず、経験記述という試験の正体から。

経験記述で落ちる監督の多くは、文章力がないのでも、工事経験が足りないのでもありません。

自分の工事経験を、採点者に伝わる形に”翻訳”できていないだけです。

私自身がそうでした。一級では規模の大きな工事の経験が求められますが、大手ゼネコンでもない限り、超高層のような「いかにも一級らしい」現場の経験はなかなか積めません。

当時の私は、自分の普通の工事をどう書けば一級の答案になるのか分からず、落ちました。

しかし型を学んで分かったのは、答案が見劣りする原因は工事の規模ではないということです。採点者が見ているのは工事の派手さではなく、「この受検者は施工管理を技術として理解し、実行できる人間か」です。

それを伝える書き方にはちょっとした作法があり、作法さえ守れば、ごく普通の改修工事や中規模の新築でも十分に戦えます。

その作法が、これから説明する「型」です。

令和6年度から何が変わったか:ネタ暗記から「その場対応」へ

型の前に、形式変更を押さえます。ここを知らずに古い対策本の通りに準備すると、本番で面食らいます。

  • 旧形式(〜令和5年度):受検者自身が経験した工事を選び、工事概要から自由に記述する
  • 新形式(令和6年度〜):試験で提示された工事概要に基づいて記述する
ヤマダ

私が合格した平成31年度は旧形式でした。

旧形式の定番対策は「品質・工程・安全の3テーマで自分の工事ネタを事前に作り込み、暗記して本番で書き写す」というもの。極端な話、事前に完成させた答案の再現勝負でした。

新形式ではこれは通用しません。実際に、令和6年度は働き方改革を背景に提示された工事概要に対して現場作業の軽減策を提案させる出題でした。令和7年度は品質管理に関する設問で過去の問題と似てましたが、工事概要は試験で初めて知ることになります。

つまり、自分のネタを持ち込むのではなく、与えられた現場に対して統括管理者として提案する方向に試験が動いています。

これは独学組にとって悪い話ばかりではありません。「大規模工事の経験がないと書くネタがない」という、かつて私を落とした壁は低くなりました。

代わりに問われるのは、どんな工事概要を出されても、その場で型に流し込んで答案を組み立てる力です。ネタの暗記は効かなくなり、型の理解がそのまま合否に直結するようになった、と言えます。

合格答案の「型」:数値と因果がすべて

私が講座の添削で叩き込まれ、いまでも経験記述の本質だと思っているのは、次の2つです。

① 正しい数値を入れる

数値は説得力に直結します。逆に、数値のない記述は「本当に現場をやった人間か」を採点者が判断できません。

  • NG:「コンクリート打設時の品質管理に留意した」
  • OK:「日平均気温が25℃を超える時期の打設であったため、暑中コンクリートとして練上がり温度を35℃以下に管理した」

NG例は誰でも書けます。OK例は、管理基準値を知っていて、実際に管理した人間にしか書けません。

これが「一級らしさ」の正体です。派手な工事名ではなく、基準値・寸法・日数・人工といった数値が、経験の実在を証明します

注意点はひとつ。数値は「正しい」ことが絶対条件です。うろ覚えの数字を書くと、正確な数値なら得点源になるはずの箇所が、逆に知識不足の証拠になります。

書く可能性のある管理項目については、仕様書レベルの基準値を事前に確認しておいてください。

② 因果関係で書く:「〜のため、〜した」

もうひとつの柱が因果です。合格答案の文は、ほぼすべてこの構造でできています。

「(現場の条件・課題)のため、(対策)した。その結果、(効果)となった」

  • NG:「型枠の存置期間を適切に管理した」
  • OK:「工期短縮のため圧縮強度試験による存置期間短縮を計画したが、外気温が低く強度発現が遅れる懸念があったため、供試体を現場水中養生とし、圧縮強度10N/mm²以上を確認してからせき板を取り外した」

NG例には理由も結果もありません。OK例は「なぜその対策を選んだのか」の判断過程が見えます。採点者が知りたいのはまさにここです。施工管理とは判断の連続であり、判断の理由を言語化できることが、管理能力の証明だからです。

型の全体骨格

この2つを載せる器が、答案全体の骨格です。

  1. 課題:その工事の条件から生じた技術的課題(数値で特定する)
  2. 検討・対策:課題に対して何を検討し、何を実施したか(因果で書く)
  3. 結果:対策の効果(可能な限り数値で締める)

書き出す前に「課題→対策→結果」を一行ずつのメモにして、因果がつながっているか確認してから清書する。添削で私が学んだ手順は、突き詰めるとこれだけです。

型に流し込む練習方法:工事の棚卸し→書く→直す

型を理解しても、本番でいきなり書けるようにはなりません。練習の手順を紹介します。

ステップ1:自分の工事を棚卸しする

まず、これまで担当した工事から2〜3件を選び、管理項目ごとに「課題・対策・数値」を掘り起こす表を作ります。

  • 工事名・構造規模・自分の立場
  • 品質管理:管理した項目/基準値/実施した対策
  • 工程管理:制約条件(工期・揚重・天候)/短縮や調整の手立て
  • 安全管理:リスク/低減措置/数値(離隔、開口部寸法、朝礼人数など)

新形式ではネタの持ち込みができないのに、なぜ棚卸しをするのか。型に流し込む「部品」を自分の中に持つためです。提示された工事概要がRC造の事務所でも、S造の工場でも、書く中身は結局「自分が現場で実際に管理してきた項目と基準値」の組み合わせです。棚卸しで部品を言語化しておけば、初見の工事概要にも対応できます。

このとき、数値がうろ覚えの項目は必ず仕様書・共通仕様書レベルまで確認して埋めてください。ここで確認した基準値は、そのまま二次の知識記述の得点源にもなります。

ステップ2:時間を計って書く

3テーマ(品質・工程・安全)について、過去問の工事概要を使い、時間を計って手書きで書きます。ポイントは2つ。

  • 一発で完成させようとしない。最初の答案は誰でもひどいものです。書く→直すのサイクル前提で始めてください
  • 手書きにこだわる。本番は手書きです。書き慣れない漢字、消しゴムのロス、文字数の感覚は、手を動かさないと身につきません

ステップ3:他人の目を通す

そして最重要がここです。自分の答案は、自分では採点できません。

私は独学時代、「書けているつもり」の答案で落ちました。数値が抜けている、因果がつながっていない、課題と対策がズレている——こうした穴は、書いた本人には見えないのです。型を知っている第三者に見てもらって初めて分かります。

添削をどう確保するか

添削の確保方法は、現実的には次の3つです。

① 社内・周囲の有資格者に見てもらう

一級持ちの上司や先輩に頼める環境なら、まずこれです。

費用ゼロで、あなたの現場を知っている人の指摘は具体的です。弱点は、資格を持っていても「教えるための型」を持っている人は少ないこと。感覚的な赤入れになりがちです。

② 通信の添削サービスを使う


経験記述の添削に対応した低価格の通信サービスがあります。

代表格の独学サポート事務局は、講義なしの「独学支援」に割り切ることで1万円台からという価格を実現しており、独学の弱点である「他人の目」だけをピンポイントで買える合理的な選択肢です。

なお同社には経験記述の「作文作成代行」サービスもありますが、令和6年度からの形式変更で、事前に用意した答案が本番の工事概要と噛み合う保証はなくなりました。

ヤマダ

使うなら「代わりに書いてもらう」ためではなく、型を学ぶ素材と添削のために。ここは正直に書いておきます。

③ 資格学校の講座に入る

費用は最も大きいですが、型の講義から添削・模試までワンセットです。

私はこのルート(日建学院)で合格しました。二次に一度落ちて「独学の限界」を実感していたので、迷いはありませんでした。1年を確実に取りに行く投資と考える人向けです。

どれを選ぶかは、①の記事で書いた判断基準——「型」と「他人の目」を自力で確保できるか——で決めてください。

ヤマダ

講座・通信講座の比較は別記事で詳しくやっています。

よくある質問

例文集を暗記して、そのまま書いたらダメですか?

新形式では、提示される工事概要と暗記した例文が噛み合わなければ、その時点で破綻します。また、市販例文の丸写しに近い答案は採点者側も見慣れています。例文は「型のサンプル」として構造を学ぶ材料にして、中身は自分の部品で書いてください。

経験していない工事や対策を書いてもいいですか?

実際に管理したことのない項目は書かないのが原則です。数値や手順の細部が曖昧になり、かえって減点要素になります。それ以前に、経歴・経験の虚偽は受検資格レベルの問題になり得ます。棚卸しをすれば、書ける部品は必ず見つかります。

字はきれいでないとダメですか?

上手い下手は問われませんが、読めない字は採点できません。手書き練習はこの意味でも必須です。

どの管理項目を選べば書きやすいですか?

自分が数値で語れる項目です。かっこいい項目より、基準値と結果を具体的に書ける項目のほうが確実に点になります。棚卸し表で「数値が埋まった行」から選んでください。


まとめ:型=数値×因果。あとは他人の目

  • 経験記述は作文ではなく、自分の経験を採点者に伝わる形へ翻訳する試験
  • 令和6年度からの新形式で、ネタの暗記は通用しにくくなった。問われるのは初見の工事概要を型で処理する力
  • 型の柱は2つ。正しい数値(経験の実在証明)と因果関係(判断能力の証明)
  • 練習は「棚卸し→時間を計って手書き→添削」のサイクル。自分の答案は自分では採点できない

勉強法の全体像は次の記事を、独学と講座の費用対効果の比較は別記事で執筆予定です。

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