元請けから「見積書に法定福利費を内訳明示してください」と言われて、何をどう書けばいいか迷ったことはありませんか。
この記事では、2026年度の最新の保険料率をもとに、法定福利費の計算方法と見積書への書き方を実務ベースで解説します。労務費を入れるだけで計算できるExcelツールも無料で配布しているので、あわせて使ってみてください。
結論:建設業の法定福利費は労務費の約15〜16%(2026年度)
建設業の法定福利費は、労務費の約15〜16%(2026年度・事業主負担分)が目安です。見積段階で迷ったら、16%で概算しておけば大きくずれません。
内訳は次のとおりです。
| 保険の種類 | 料率(労使合計) | 事業主負担 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・全国平均) | 9.9% | 4.95% |
| 厚生年金保険 | 18.3% | 9.15% |
| 雇用保険(建設の事業) | 1.65% | 1.05% |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月〜) | 0.23% | 0.115% |
| 介護保険(40〜64歳の社員のみ) | 1.62% | 0.81% |
| 合計 | 約15.3%(40〜64歳は約16.1%) |
※協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに違います(例:東京都9.85%)。自社の支部の率で計算してください。
※建設国保や健康保険組合に加入している場合は、加入先の保険料(率または金額)で計算します。
※労災保険は元請が加入するため、下請の見積書には通常含めません(理由は後述)。
料率は毎年のように改定されます。2026年度は、雇用保険の引き下げ、健康保険の全国平均の引き下げ、介護保険の引き上げ、子ども・子育て支援金の新設と、変更点が多い年です。前年の見積書の数字をそのまま使い回さないよう注意してください。
法定福利費とは
法定福利費とは、社会保険料のうち会社(事業主)が負担する分のことです。社員を雇うと、健康保険・厚生年金・雇用保険などの保険料の一部を会社が負担する義務があります。
建設業でこれが重視される背景には、長年の社会保険未加入問題があります。下請けへの支払いに法定福利費が含まれていないと、保険料を払う原資がなく、結果として未加入につながります。そのため国土交通省は、見積書で法定福利費を内訳明示するよう業界全体に求めています。
元請けが内訳明示を求めるのは、下請けが適切に保険に加入しているか、必要な経費を見込んでいるかを確認するためです。
法定福利費の計算方法
計算式はシンプルです。
法定福利費 = 労務費 × 事業主負担の保険料率
ポイントは、かけるのは「労務費」だけということです。材料費や外注費を含めた工事費全体にかけてはいけません。
計算例(労務費100万円・40歳未満の社員の場合)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 100万円×4.95% | 49,500円 |
| 厚生年金 | 100万円×9.15% | 91,500円 |
| 雇用保険 | 100万円×1.05% | 10,500円 |
| 子ども・子育て支援金 | 100万円×0.115% | 1,150円 |
| 法定福利費 合計 | 152,650円 |
40〜64歳の社員が従事する場合は、介護保険の8,100円(100万円×0.81%)が加わって160,750円になります。
実際の保険料は「標準報酬月額」をもとに計算されるので、見積書の法定福利費はあくまで概算です。見積段階では、この計算方法で十分です。
労災保険を見積書に入れない理由
建設業の労災保険は、元請けが工事ごとに一括して加入するのが原則です。下請けの作業員が現場でけがをした場合も、元請けの労災保険で補償されます。
そのため、下請けが見積書に書く法定福利費は、**健康保険・厚生年金・雇用保険(+子ども・子育て支援金、該当者は介護保険)**が基本で、労災保険は含めません。
元請けの指定様式に労災の欄がある場合は、その指示に従ってください。
見積書への書き方
内訳明示の基本フォーマット
元請けから指定された様式があれば、その書式に従います。指定がない場合は、次のように労務費の金額を明示したうえで、法定福利費を工事費と別の項目として書くのが一般的です。
工事費(税抜) 3,000,000円
うち労務費 1,000,000円
法定福利費(事業主負担分)
健康保険 49,500円
厚生年金保険 91,500円
雇用保険 10,500円
子ども・子育て支援金 1,150円
法定福利費 合計 152,650円
見積金額 合計(税抜) 3,152,650円
「うち労務費」を書いておくと、元請けが「何に対して何%か」をすぐ確認できます。差し戻しが減るので、書いておくのがおすすめです。
よくある書き方ミス2つ
ミス1:法定福利費を工事費の中に含めてしまう
工事費の中に法定福利費を混ぜてしまうと、内訳明示になりません。元請けが金額を確認できないので、必ず独立した項目として書いてください。
ミス2:工事費全体に料率をかけてしまう
法定福利費のベースは労務費だけです。材料費や外注費を含めた工事費全体にかけると、金額が大きく膨らみます。元請けからも「根拠がおかしい」と指摘される原因になります。
自動計算ツールの使い方
法定福利費を毎回電卓で計算するのは手間がかかりますし、料率の打ち間違いも起きやすいです。
当サイトで配布している法定福利費の自動計算ツールなら、労務費を入れるだけで保険ごとの金額と合計が自動で出ます。2026年度の料率に更新済みです。


計算結果は「見積書への転記用まとめ」として項目名付きで表示されます。
自社の見積書書式に転記するときに迷いません。保険料率は黄色セルで編集できるため、年度改定があっても数字を書き換えるだけで対応できます。
よくある質問
- 一人親方の場合も法定福利費は必要?
-
人を雇っていない一人親方は、会社負担の社会保険料が発生しないので、法定福利費は基本的にかかりません。従業員を雇っている場合は、その従業員の分を計上します。
- 労務費がわからないときは?
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見積の段階で労務費がはっきりしない場合は、工事費のうち人件費が占める割合(労務比率)から労務費を推定する方法があります。専門工事業の団体が出している標準見積書にも、この考え方が採用されています。自社の過去の工事実績から「この工種なら工事費の◯割が労務費」という目安を持っておくと、見積が早くなります。
- 法定福利費に消費税はかかる?
-
かかります。法定福利費は請負代金の一部なので、見積金額の合計に対して消費税を計算します。
- 社員の年齢がバラバラな場合は?
-
介護保険は40〜64歳の社員だけが対象です。厳密に計算するなら、介護保険の対象者分の労務費だけに0.81%を上乗せします。見積段階でそこまで分けるのが大変なら、16%で概算しておけば大きくはずれません。
- 子ども・子育て拠出金は入れる?
-
厚生年金の加入者がいる会社は、事業主だけが負担する「子ども・子育て拠出金」も払っています。見積に含めるかどうかは、元請けの様式に合わせてください。率は日本年金機構のサイトで確認できます。
見積のあとは請求書も準備しておこう
見積が通って工事が終われば、次は請求書です。建設業の請求書は、工事一式で請求するケースと、常用(人工代)で請求するケースで書き方が変わります。
工事一式用・常用用の2種類の請求書テンプレートを無料で配布しているので、見積書とセットで使ってみてください。

まとめ
- 建設業の法定福利費は、労務費の約15〜16%(2026年度・事業主負担分)が目安
- 2026年度は雇用保険1.05%、健康保険(全国平均)4.95%、厚生年金9.15%、子ども・子育て支援金0.115%。40〜64歳は介護保険0.81%が加わる
- 料率をかけるのは労務費だけ。工事費全体にはかけない
- 労災保険は元請けが加入するので、下請けの見積書には通常含めない
- 見積書には「うち労務費」を明示して、法定福利費を独立した項目で書く
計算ミスと料率の更新漏れは、自動計算ツールを使えば防げます。見積のたびに電卓をたたいている方は、ぜひ試してみてください。




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