自分が1級建築施工管理技士を取ると、会社の経審が何点上がるか、知っていますか。
資格の話は普通、「取ると自分のキャリアにどう効くか」で語られます。しかし会社側から見ると、あなたの資格は経営事項審査(経審)の点数、つまり公共工事の入札力そのものです。
ここを知っているかどうかで、資格取得の会社との交渉——受検費用の負担、講座費用の支援、資格手当——の説得力が変わります。
私は現場監督歴20年、1級建築施工管理技士の現役監督です。この記事では、技士補を含む資格別の経審の点数を整理し、「あなたの資格が会社にとっていくらの価値か」を解説します。技士補(1級一次合格)の加点を調べに来た方は、最初の表で即答します。
結論:資格別の技術職員点数 早見表
経審では、技術職員1人ひとりが資格に応じて点数化されます。建築工事業での主な区分は次の通りです。
| 点数 | 区分 |
|---|---|
| 6点 | 監理技術者講習修了者(1級技士等で講習を修了し資格者証を持つ者) |
| 5点 | 1級技士、技術士 等(講習未修了) |
| 4点 | 監理技術者を補佐する者として配置可能な1級技士補(=主任技術者となる資格+1級一次合格) |
| 3点 | 登録基幹技能者講習修了者、レベル4技能者 |
| 2点 | 2級技士、1級技士補(※補佐要件を満たさない場合の扱いは要確認)、レベル3技能者 等 |
| 1点 | その他技術職員、実務経験による主任技術者 |
読み取れることが3つあります。
- 4点の条件は「1級一次合格」だけではありません。 「監理技術者を補佐する者として配置可能」であること、つまり主任技術者となる資格(実務経験等)を併せ持つことが必要です。制度上の位置づけも明確で、主任技術者相当より上位、監理技術者相当(5点)より下位として4点が設定されています
- 同じ1級技士でも、監理技術者講習の修了で6点と5点に分かれます。 講習には費用と有効期限がありますが、会社から見れば修了させる価値が1点分の差として見えます
- 実務経験だけの技術職員にも点はつきますが、無条件ではなく年数等の要件があります
なお、点数にカウントされるには審査基準日以前に6ヶ月を超える恒常的な雇用関係が必要です。取ったその日から即カウント、ではない点は覚えておいてください。
まず誤解を解く:技術職員の点数は「W点」ではなく「Z点」
ここで、検索してこの記事にたどり着いた方の多くが持っている誤解をひとつ解いておきます。
技術職員の点数は、経審の「Z点(技術力)」です。「W点」ではありません。
経審の総合評定値(P点)は、いくつかの評点の組み合わせで決まります。ざっくり言うと:
- X1:完成工事高
- X2:自己資本額・平均利益額
- Y:経営状況(財務の健全性)
- Z:技術力=技術職員数値+元請完成工事高
- W:社会性等(その他の審査項目)
資格者の頭数と資格の質が効くのはZ点です。一方のW点は、建設業退職金共済への加入、CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用、そして若年技術職員の継続的な育成・確保といった「会社の姿勢」への加点です。
つまり技術職員は、資格でZ点に、若さでW点に、二重に効くことがあります。若手が1級技士補を取ると、Z点の加点と若年技術職員の要件の両方に貢献する可能性がある——「若いうちに取れ」は、キャリア論であると同時に、経審の構造上も合理的なのです。
ヤマダW点とZ点の混同はネット上の記事にも多いので、社内資料を作るときは評点記号まで確認することをおすすめします
技士補の加点はなぜ生まれたか
1級技士補は、令和3年の技術検定制度改正で生まれた比較的新しい資格です。1級の一次検定に合格すると名乗れて、主任技術者の資格を満たしていれば監理技術者補佐として現場に配置できます。
補佐を専任で置けば、監理技術者は2現場まで兼任可能——つまり技士補は、監理技術者不足を補う制度の要として設計されています(詳しくは監理技術者と主任技術者の違いの記事で)。


経審で技士補に点が付くのは、この配置上の価値の裏返しです。国の制度が「技士補は会社の戦力である」と点数で宣言している、と読めます。
現場監督にとっての技士補資格の意味を正確に捉えなおしておきましょう。
4点の条件は「一次合格+主任技術者となる資格」のセットです。なので最短で価値が立ち上がるのは、すでに実務経験を積んで主任技術者要件を満たしている人——つまり現場で経験を重ねてきたあなたです。一次に受かった瞬間、二次の結果を待たずに、会社の経審上は4点の技術職員になります。
逆に経験の浅い若手は、一次に受かってもすぐには4点になりません。ただし悲観する話ではなく、実務経験が要件に達した時点で自動的に4点者に化ける「仕込み」が完了するということです。一次合格は無期限有効なので、早く取って損は一つもありません(勉強法は別記事で)。


あなたの資格は、会社への交渉材料になる
ここからが、この記事で一番書きたかったことです。
経審の点数の話は、ふつう経営者や総務の話題で、現場の監督には関係ないものとして扱われます。しかし逆から見てください。Z点はあなたたち技術職員の資格の合計でできています。 会社の入札力の一部は、あなたが夜と休日に勉強して取った資格で成り立っている。
だとすれば、これは交渉材料です。
- 受検手数料・講習費用の会社負担:あなたの合格は会社のZ点に直結します。「経審の点数が上がる投資です」という言い方は、単なる自己啓発支援のお願いより通ります
- 講座費用の支援:二次対策の講座も同じ理屈です。会社が急いで1級保有者を増やしたい局面(入札ランクの維持・昇格)なら、なおさらです
- 資格手当の根拠:資格手当は温情ではなく、Z点への対価と考えれば、金額交渉の土台になります



もちろん、点数を盾に強気に出ろという話ではありません。
ただ、自分の資格が会社の決算書のどこに効いているかを知っている監督と、知らない監督では、処遇の話し合いの解像度がまるで違います。
経審は会社のものであると同時に、そこに名前が載る技術職員一人ひとりのものでもあるのです。


会社側の実務:技術職員名簿
経審で技術職員としてカウントされるには、申請時の技術職員名簿に記載される必要があります。
資格区分コードの記入や、審査基準日時点の雇用関係の証明など、書類実務には細かいルールがあるので注意してください。



名簿の書き方・様式・資格区分コードの詳細は、別記事で解説する予定です(※執筆予定)。
よくある質問
- 出向者や派遣社員も技術職員としてカウントされますか?
-
原則として、直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。出向者の扱いには細かい要件があるため、該当する場合は行政庁の手引きで確認してください。
- 監理技術者講習の有効期限が切れたらどうなりますか?
-
講習受講による加点の要件を満たさなくなるため、点数が下がります。会社として1級技士の講習の有効期限を一覧管理しておくのが実務上の定石です。
- 同じ人が複数の1級資格を持っていたら、その分加点されますか?
-
技術職員1人につき評価できる資格には上限があります。
- 経審を受けていない会社では資格の意味がないのですか?
-
経審は公共工事の入札に参加する会社の話ですが、Z点に象徴される「資格=会社の技術力の証明」という構造は、民間工事の受注や元請への信用でも同じように働きます。
まとめ
- 技術職員の点数はZ点。W点(社会性等)との混同に注意
- 実務経験があれば1級技士補(一次合格)だけで2級技士より高く評価される。二次合格前から会社の戦力
- 1級+監理技術者講習でさらに加点。講習の有効期限管理まで含めて価値
- 経審の点数は、受検費用・講座費用・資格手当を会社と話すときの交渉材料になる
1級の取り方は勉強法の記事へどうぞ。


監理技術者制度の全体像は監理技術者と主任技術者の違い記事で解説しています。






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