元請から、送り出し教育の実施報告書を出してくださいと言われた」
「送り出し教育って、何をどこまで教えればいいの?」
協力会社の事業主さんや職長さんから、こうした声をよく聞きます。新規入場者教育は現場側が資料を用意してくれますが、送り出し教育は自分の会社で準備しなければならないので、何をすればいいのか迷いやすい教育です。
この記事では、現場監督歴20年の目線で、送り出し教育の基本と実施報告書の書き方をまとめました。あわせて、そのまま使える教育スライド(PowerPoint・6項目)を無料で配布しています。
| 無料版 | 完全版(note・980円) | |
|---|---|---|
| 教育項目 | 6項目 | 12項目 |
| 読み上げ台本 | ― | 全スライドに付属 |
| 実施報告書Excel | ― | 記入例付き |
送り出し教育とは?
現場に送り出す前に、所属会社が行う安全教育
送り出し教育とは、作業員を元請の現場に送り出す前に、所属している会社が自社の作業員に対して行う安全教育のことです。
会社の安全方針や、現場での基本的なルール、服装・保護具、体調管理などを伝えるとともに、資格や健康状態に問題がないかを、入場前に会社として確認しておく目的があります。
元請からすると、「この作業員は、会社としてきちんと教育したうえで送り出されている」という確認になります。そのため、実施した記録として送り出し教育実施報告書の提出を求められることが多いです。
新規入場者教育との違い
よく混同されるのが新規入場者教育です。どちらも現場に入る前後に行う教育ですが、誰が・どこで・何を教えるかが違います。
| 送り出し教育 | 新規入場者教育 | |
|---|---|---|
| 実施する人 | 所属会社(事業主・職長など) | 入場する現場(元請・職長など) |
| 時期 | 現場に入る前 | 現場に入った初日 |
| 場所 | 自社の事務所など | 現場 |
| 主な内容 | 会社の安全方針・基本ルール・健康管理・資格の確認 | その現場の配置・ルール・緊急時の連絡先 |
ざっくり言うと、送り出し教育は「会社として」、新規入場者教育は「現場として」行う教育です。
大事なのは、送り出し教育を受けても、新規入場者教育が免除されるわけではないという点です。現場ごとに危険な場所や避難経路、連絡先は違うので、入場初日には必ず新規入場者教育を受けます。両方受けて、はじめて現場で作業できると考えてください。
ヤマダ新しく入場してきて「新規はもう会社でやってきたよ」という人もちらほら居るので結構混同しがちなポイントです
新規入場者教育については、こちらの記事で資料を無料配布しています。


また、作業員名簿のExcelテンプレートと送り出し教育のスライド(完全版)をセットにしたものもあります。単品で買うより500円弱お得です。


送り出し教育は誰が行う?
実施するのは、作業員を送り出す所属会社です。実際に話をするのは、事業主(社長)、職長、安全衛生責任者などが多いです。
二次・三次の協力会社の作業員がいる場合は、それぞれの所属会社が自社の作業員に対して行うのが基本です。一次の協力会社がまとめて行う場合もあるので、元請や上位の会社の指示に従ってください。
送り出し教育は義務なの?



実は、法律に「送り出し教育」という名前の教育が定められているわけではありません。
ただし、労働安全衛生法第59条では、事業者に対して次のような安全衛生教育を行うことを義務づけています。
- 労働者を雇い入れたときの教育(第1項)
- 労働者の作業内容を変更したときの教育(第2項)
- 危険・有害な業務につかせるときの特別教育(第3項)
送り出し教育は、こうした事業者の教育義務を踏まえて、元請が協力会社に対して「入場前に会社として教育を行い、その記録を出してください」と求めているもの、と考えると分かりやすいです。
つまり、法律上の名前はなくても、元請から求められたら実施して報告するのが当たり前の教育です。特に、新しく雇い入れた人や、これまでと違う作業を担当する人を現場に出すときは、法律上の教育としての意味もあるので、きちんと行っておきましょう。
時間の目安は?
送り出し教育の時間について、法律で何時間と決まっているわけではありません。元請から時間の指定があれば、それに従ってください。
現場の実感としては、30分〜1時間程度で行う会社が多い印象です。今回配布しているスライドも、完全版の12項目を読み上げ台本どおりに進めると、確認テストと署名を含めて30分前後で終わる分量にしています。
送り出し教育で教える内容(12項目)
送り出し教育で教える内容にも、法律で決まった項目はありません。とはいえ、現場に出る前に会社として伝えておくべきことは、だいたい決まっています。今回作ったスライド(完全版)では、次の12項目にまとめました。
| No | 項目 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 01 | 送り出し教育とは | 新規入場者教育との違い |
| 02 | 当社の安全方針と心構え | 会社の方針、分からないことは聞く |
| 03 | 現場の基本ルール | 入場手続き〜朝礼・KY〜終礼までの流れ |
| 04 | 服装・保護具 | 正しい着用と、やってはいけない着方 |
| 05 | 健康管理と体調の申告 | 睡眠・飲酒・熱中症・持病と服薬 |
| 06 | 担当作業の危険と対策 | 自社の作業で起こりやすい災害 |
| 07 | 資格・免許の確認 | 特別教育・技能講習が必要な作業 |
| 08 | 災害事例とヒヤリハット | 墜落・転落の事例、自社のヒヤリハット |
| 09 | 事故・ケガの報告 | 報告の手順、労災かくしの禁止 |
| 10 | 通勤・車両の安全 | 通勤時と現場内の車両ルール |
| 11 | 禁止事項 | 無断立入り・手すりの取り外しなど |
| 12 | まとめと確認テスト | ○×5問 |
このうち、現場監督の立場から特に伝えておいてほしいと感じるのが、次の3つです。
① 入場初日は、必ず新規入場者教育を受ける
入場して間もない時期は、現場の配置もルールも分からないため、事故が起きやすいと言われています。送り出し教育を受けたからといって、現場の教育を省略してよいわけではありません。「初日は新規入場者教育を受けてから作業」と、会社からもはっきり伝えておいてください。
② 資格のない作業は、頼まれても引き受けない
現場では、人手が足りないときに「ちょっとこれもやって」と頼まれることがあります。玉掛けや高所作業車の運転など、資格が必要な作業を無資格で行えば、本人だけでなく会社の責任も問われます。修了証を持たせるとともに、「資格のない作業は断っていい」と会社として言ってあげることが大事です。
③ ケガを隠さない
小さなケガを「迷惑をかけたくないから」と隠してしまう作業員は少なくありません。しかし、ケガを隠すことは労災かくしという法律違反になり、後から痛みが出たときに労災の手続きもできなくなります。「小さなケガでも報告した人を責めない」という会社の姿勢を、教育の場で伝えておきましょう。



ベテランの職人さんは技術と知識があるので色んな作業をしてくれるのですが、よくよく確認してみたら玉掛けの資格を持ってなかったなんて事も過去にあったので監理する側としても注意が必要です
送り出し教育実施報告書の書き方と記入例
送り出し教育を行ったら、送り出し教育実施報告書にまとめて元請に提出します。元請によって様式は違いますが、書く項目はだいたい共通しています。
報告書に書く項目
- 宛先:元請会社名、作業所長名、工事名
- 報告者:自社の会社名、次数(一次・二次など)、所在地、事業主名、安全衛生責任者
- 実施内容:実施日、実施時間、実施場所、実施者(役職・氏名)
- 教育項目:実施した項目にチェック
- 受講者一覧:氏名、職種、生年月日、年齢、経験年数、本人の署名
記入例


記入例は、内装工事の一次協力会社が、元請の新築工事現場に作業員5名を送り出す場合です(会社名・人名はすべて架空です)。
書くときの注意点
- 元請指定の様式があれば、そちらを優先する:グリーンサイトなどで提出方法が決まっている場合も、元請の指示に従ってください
- 署名は受講者本人が手書きする:代筆はしないでください。教育を受けた証拠になる部分です
- 教育項目は、実際に行ったものだけチェックする:チェックだけ付けて中身を省略するのはやめましょう
- 控えを社内に保管しておく:元請から後で確認されることもあります
送り出し教育の資料(スライド)を無料配布
無料版の内容(6項目)





無料版は、送り出し教育でまず押さえておきたい6項目にしぼった簡易版です。
01 送り出し教育とは/02 現場の基本ルール/03 服装・保護具/04 健康管理と体調の申告/05 事故・ケガの報告/06 まとめと確認テスト
ダウンロード
使い方
- 表紙に会社名・実施日・実施者を書き込みます(印刷してから手書きでもOKです)
- 「05 事故・ケガの報告」に、会社の緊急連絡先と担当者を書き込みます
- スライドを映すか印刷して配り、順番に説明します
- 最後に確認テストを行い、受講者に報告書へ署名してもらいます
完全版でできること
完全版では、教育項目を12項目に増やし、次のものを追加しています。
- 全スライドの読み上げ台本:ノート欄に、そのまま読める台本が入っています。教育に慣れていない職長さんでも、読むだけで30分の教育ができます
- 送り出し教育実施報告書(Excel・記入例付き):スライドの12項目と、報告書のチェック欄が対応しています
- 自社に合わせて書き込める欄:安全方針、担当作業の危険と対策、自社のヒヤリハット




よくある質問
- 一人親方にも送り出し教育は必要ですか?
-
一人親方は雇っている作業員がいないため、会社が作業員に教育するという形にはなりません。ただし、元請から入場前の教育や報告書の提出を求められることはあります。その場合は、自分で内容を確認したうえで報告書を出すなど、元請の指示に従ってください。
- 二次以下の協力会社の作業員はどうすればいいですか?
-
基本的には、それぞれの所属会社が自社の作業員に送り出し教育を行います。一次の協力会社がまとめて行うよう指示される場合もあるので、元請や上位の会社に確認してください。
- 送り出し教育をすれば、新規入場者教育は受けなくていいですか?
-
いいえ、受ける必要があります。送り出し教育は会社として、新規入場者教育は現場として行う教育で、目的が違います。入場初日には必ず新規入場者教育を受けてください。
- グリーンサイトで提出を求められた場合は?
-
グリーンサイトなどの電子システムで提出する場合は、元請の指定する方法に従ってください。報告書の内容(実施日・実施者・受講者など)は、この記事の項目と大きくは変わりません。
- 確認テストの答えは?
-
無料版の確認テストの答えは次のとおりです。
Q1 ×(新規入場者教育は必ず受ける)/Q2 ○/Q3 ×(慣れていても二日酔いでの作業は禁止)/Q4 ×(手すりを外すときは職長の許可を取り、終わったらすぐ戻す)/Q5 ○
まとめ
送り出し教育は、作業員を現場に送り出す前に、会社として安全の基本を伝える教育です。新規入場者教育とは目的が違うので、両方受けてはじめて現場に入れる、と覚えておいてください。
- 法律に「送り出し教育」という名前はないが、安衛法第59条の安全衛生教育を踏まえて、元請から実施と報告を求められる
- 教える内容は、会社の方針・基本ルール・保護具・健康管理・資格・事故の報告など
- 実施したら、報告書に受講者本人の署名をもらって提出する
資料を一から作るのは大変なので、無料版のスライドをぜひ使ってみてください。読み上げ台本と報告書Excelがほしい方は、完全版も用意しています。











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