コンクリート工事の施工計画書は、ひな形を探せばすぐに見つかります。ただ、ひな形を埋めただけで出すと、監督員から差し戻されることが少なくありません。見られているのは章立てよりも「この現場で具体的にどうするか」が書けているかどうかです。
この記事では、建設業20年の現場監督の立場から、コンクリート工事施工計画書の記載項目と記入例、そして実際に差し戻されやすいポイントをまとめます。
- コンクリート工事施工計画書の「2種類」の違い
- 記載項目(章立て)の全体像
- 使用材料・打込み・受入検査・養生の記入例
- 監督員に差し戻されやすい5つのポイント
まず確認:「コンクリート工事施工計画書」は提出先で2種類ある
「コンクリート工事施工計画書」で検索すると、性格の違う書類が混ざって出てきます。
① 監督員・工事監理者へ出す工種別施工計画書
工事の着手前に、コンクリート工事をどう進めるかを具体的に示す書類です。公共建築工事標準仕様書やJASS5、特記仕様書に沿って作成します。一般に数十ページになることもあります。
② 確認検査機関・行政へ出す定型様式
建築確認の手続きの流れで、確認検査機関や特定行政庁から提出を求められる数ページの様式です。様式が指定されており、生コン工場の調合に関する書類などを添付する形のものが見られます。要否や様式、記入方法は提出先の機関や行政庁ごとに異なるため、提出先の案内で確認してください。
見分け方はシンプルで、提出先がどこかと様式が指定されているかの2点です。この記事では①の工種別施工計画書を扱います。
コンクリート工事施工計画書の基本
誰が作って誰に出すのか
一般に、元請の施工者(現場代理人や監理技術者・主任技術者の立場の現場監督)が作成し、監督員や工事監理者の承諾を受ける流れです。生コン工場や専門工事業者から出てくる書類は、施工計画書の添付資料として組み込みます。
何を根拠に書くのか
記載内容の根拠になるのは、主に次の3つです。
- 公共建築工事標準仕様書(公共工事の場合)
- JASS5(日本建築学会 建築工事標準仕様書・同解説 鉄筋コンクリート工事)
- その工事の特記仕様書
特記仕様書の指定は標準仕様書より優先されるのが一般的です。書き始める前に、特記仕様書のコンクリートの項目に目を通しておくと手戻りが減ります。
記載項目(章立て)の一覧
工種別施工計画書の章立ては、おおむね次の構成です。
- 総則(適用範囲・適用図書)
- 工事概要(工事名・工事場所・工期・対象部位・構造種別)
- 施工管理体制(組織表・連絡体制)
- 使用材料(生コン工場・配合計画書・種類・呼び強度)
- 施工フロー・工程
- 打込み計画(打込み区画・順序・打継ぎ)
- 締固め
- 養生・型枠の存置期間
- 品質管理(受入検査・供試体の採取と試験)
- 寒中コンクリート・暑中コンクリート(該当する場合)
- 安全管理(場内・場外の車両動線、交通誘導員)
ヤマダ日建連関西支部などがExcel形式のひな形を公開しているので、章立ての参考にするのもひとつの方法です。
記入例:差がつく4項目
以下は記入例のイメージです。数値や名称は現場ごとに異なるため、[ ]の部分は必ず特記仕様書・設計図書・配合計画書に合わせて記入してください。
使用材料(生コン工場と配合計画書)
- 使用材料
4-1 レディーミクストコンクリート
製造工場:[工場名](JIS表示認証工場)
種類:[普通コンクリート]
呼び強度:[ ] 設計基準強度:[ ]
構造体強度補正値:[ ](適用期間:[ ])
スランプ:[ ] 粗骨材の最大寸法:[ ]
セメントの種類:[ ]
※詳細は添付のレディーミクストコンクリート配合計画書による
配合計画書は生コン工場に作成してもらう書類です。公共工事では、一般にJIS表示認証を受けた工場の製品が求められます。工場の選定と配合計画書の依頼は早めに動いておくのが無難です。
なお、生コン工場の書類は「配合」、建築の仕様書では「調合」と、同じものを指す言葉が使い分けられています。施工計画書の中で表記が混ざっていても実務上は通じますが、気になる場合は提出先の用語に合わせておくと丁寧です。
打込み計画と打継ぎ
- 打込み計画
6-1 打込み区画:別添「打込み区画図」による([ ]回に分けて打込む)
6-2 打込み順序:[例:柱・壁 → 梁 → スラブ]
6-3 打継ぎ位置:別添図による。打継ぎ面はレイタンス等を除去し、打込み前に散水して湿潤状態とする
6-4 ポンプ車配置:別添「車両配置図」による
打継ぎは「打込み時に決める」ではなく、計画段階で位置を図示しておくのがポイントです。打継ぎ位置は構造上の扱いにも関わるため、一般に工事監理者の確認を受けることが求められます(適用する最新の仕様書・特記仕様書で確認すること)。
受入検査
- 品質管理
9-1 受入検査
検査項目:スランプ、空気量、コンクリート温度、塩化物量
検査頻度:[ ](特記仕様書による)
立会者:[監督員/統括監督員 等](事前に確認済み)
9-2 圧縮強度試験用供試体
採取頻度・材齢:[ ](特記仕様書による)
検査項目と頻度は特記仕様書の指定に合わせます。見落としやすいのが立会者の欄です(理由は後述の差し戻しポイントで)。
養生と寒中・暑中コンクリート
- 養生
8-1 湿潤養生:打込み後[ ]日間、[散水・シート養生等]により湿潤状態を保つ
8-2 型枠の存置期間:[ ](特記仕様書による) - 寒中コンクリート(適用期間:[ ])
保温養生の方法:[ ]
構造体強度補正値:[ ]
寒中コンクリート・暑中コンクリートの適用期間は、一般に地域の気温条件などで定めるとされています。工期が季節をまたぐ場合は、どの打設が該当するのかを施工計画書の時点で整理しておくと、あとで慌てません(適用する最新の仕様書・特記仕様書で確認すること)。
監督員に差し戻されやすい5つのポイント
ここからは、実際の現場で差し戻しや手戻りにつながりやすいポイントです。
1. 構造体強度補正値が書かれていない
呼び強度と設計基準強度だけ書いて、構造体強度補正値を書き漏らすと差し戻されます。
補正値は打込みの時期(気温)によって変わるため、どの期間にどの補正値を使うのかまでセットで書くのが基本です。工期が長い現場ほど、期間の区切りを明記しておきましょう。
2. 配合計画書の手配が遅れる
配合計画書は生コン工場が作成するので、自分の手元だけでは完結しません。
公共工事では、一般にJIS表示認証工場であることも確認されます。施工計画書を書き始めるタイミングで、工場の選定と配合計画書の依頼を同時に進めておくと、提出が遅れません。
3. 受入検査の立会者を確認していない
受入検査に誰が立ち会うのかは、現場によって違います。監督員なのか、その上の統括監督員なのか。これを事前に確認しておかないと、打設当日の段取りが崩れます。
施工計画書に立会者を明記しておくと、発注者側との認識合わせにもなります。



『監督員は統括監督員が立会を行うと思って打設を待たせていたけど、実際は監督員が立会えばOKだった』なんてケースが実際にありました。
無駄な待機時間は現場の士気が下がりますし、生コンは時間との勝負でもあるので避けたい事案です。
4. 打継ぎの計画が立っていない
打込み区画は書いてあっても、打継ぎ位置と処理方法が曖昧な計画書は意外と多いです。
打継ぎは品質上の弱点になりやすい箇所なので、監督員も必ず見ます。区画図に打継ぎ位置を落とし込み、処理方法まで書いておきましょう。
5. 交通誘導員の有無が書かれていない
コンクリート工事は、アジテータ車とポンプ車の出入りが集中する工種です。場内だけでなく場外の車両動線と交通誘導員の配置を書いておかないと、安全管理の章で指摘されやすくなります。道路の使用が必要な場合は、その手続きの要否も事前に確認しておきます。



近隣に学校があると登校時間帯の道路は混雑しますし、スーパーなどが近いと第三者の往来が増えるので特に注意するべきポイントです。
よくある質問
- コンクリート工事の施工計画書は誰が作成するのですか?
-
一般には施工者が作成し、監督員や工事監理者の承諾を受けます。配合計画書など生コン工場が作成する書類は、添付資料として組み込みます。
- エクセルで作成できますか?
-
作成できます。日建連関西支部などがExcel形式のひな形を公開しています。当ブログでも無料テンプレートを紹介しています(→ 無料配布テンプレート一覧)。
- 作成を外注すると費用はどれくらいですか?
-
作成代行サービスもありますが、費用は工事の規模や求められる内容によって幅があります。工種別施工計画書は現場固有の情報が中心になるため、社内で作成するケースが多いのが実情です。
下書きを早く作るなら:施工計画書ジェネレーター
ひな形を開いて一から埋めるのが面倒なら、当サイトで制作した施工計画書ジェネレーターで下書きを作るのも手です。
工事名・工事場所・対象部位などを入力すると、コンクリート工事の施工計画書のドラフトを自動で作成します。空欄の項目は勝手に埋めず「※要確認」として出力されるので、確認すべき箇所がひと目でわかります。
無料版で試せます。Word出力や入力内容の保存が必要な方は製品版も用意しています。


まとめ
- 「コンクリート工事施工計画書」には、監督員・工事監理者向けの工種別施工計画書と、確認検査機関・行政向けの定型様式がある
- 工種別施工計画書は、特記仕様書を確認してから書き始める
- 差し戻しを防ぐポイントは、構造体強度補正値・配合計画書の手配・受入検査の立会者・打継ぎ計画・交通誘導員
施工計画書の全体的な作り方は、こちらの記事で解説しています。





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