施工体制台帳が必要かどうかは、次の3つの質問で決まります。
- 下請に出しているか?——出していなければ不要
- 公共工事か?——公共なら下請契約を結んだ時点で、金額に関係なく必要
- 民間工事なら、下請契約の総額が5,000万円以上か?(建築一式工事は8,000万円以上)——超えていれば必要
これだけです。ただし、この金額ラインは直近3年で2回も改正されていて、ネット上には古い金額のままの記事が今も上位に残っています。
ヤマダこの記事では、現行ルールの根拠と改正の変遷、そして「うちの現場はどうなの?」というケース別の判定まで、受け取る書類を毎日チェックしている現場監督の立場から整理します。
30秒で判定:施工体制台帳が必要な工事・不要な工事
まず判定フローです。
STEP1 下請に出しているか
すべて自社施工(直用のみ)なら、公共・民間を問わず施工体制台帳は不要です。台帳は「下請体制を明らかにする」書類なので、下請がいなければ作りようがありません。
STEP2 公共工事か民間工事か
公共工事なら、下請契約を1件でも結んだ時点で金額に関係なく作成義務があります。100万円の下請契約1本でも必要です。
STEP3 民間工事なら下請総額を確認
発注者から直接請け負った建設工事について、下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)なら作成義務があります(2026年7月時点)。ポイントは「1社ごとの契約額」ではなく全下請契約の合計額で判定することです。
根拠は2つの法律:建設業法と入契法
「公共と民間でルールが違う」のは、根拠法が別だからです。
民間工事:建設業法(特定建設業者の義務)
建設業法にもとづき、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者が、下請総額のラインを超えたときに作成義務を負います。台帳と施工体系図を作成し、工事現場に備え置く義務です。
公共工事:入契法(金額不問)
公共工事については入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)により、平成27年4月以降、下請契約を締結したすべての公共工事で作成義務があります。さらに民間と違い、発注者への写しの提出義務まであります。
金額ラインは2段階で改正されている【重要】
民間工事の下請総額ラインは、近年2回改正されました。
| 適用時期 | 一般の工事 | 建築一式工事 |
|---|---|---|
| 〜令和4年12月 | 4,000万円以上 | 6,000万円以上 |
| 令和5年1月〜 | 4,500万円以上 | 7,000万円以上 |
| 令和7年2月〜(現行) | 5,000万円以上 | 8,000万円以上 |
検索すると「4,000万円」「4,500万円」と書かれた記事がまだ多数ヒットしますが、これらは改正前の情報です。記事の公開日が新しくても中身が古いケースがあるので、金額を確認するときは必ず適用時期とセットで見てください。



この金額ラインは監理技術者の配置義務とも連動しています


ついでに覚える:このラインは「特定建設業許可」と同じ
5,000万円(建築一式8,000万円)というラインには見覚えがあるはずです。
特定建設業許可が必要になる下請総額、監理技術者の配置が必要になる下請総額と同じなんです。



つまり「監理技術者を置く規模の民間工事なら台帳も要る」と覚えれば1本で済みます。
なお関連質問でよく出る「専任」の金額要件(請負代金ベース)は別の物差しなので混同注意です。
ケース別の判定例
Q. 下請に出さず、自社の職人だけで施工する
→ 不要。公共工事でも、下請契約がなければ台帳の作成義務はありません(発注者から施工体制の報告を別途求められることはあります)。
Q. 一人親方1社に300万円だけ出す民間の小さい現場
→ 不要(下請総額がラインに届かないため)。ただし同じ内容でも公共工事なら必要です。300万円の下請契約1本でも、公共なら台帳・体系図・発注者への写し提出まで発生します。
Q. 着工時は総額4,800万円だったが、追加工事で下請契約が5,200万円になった
→ 超えた時点で作成義務が発生します。実務では「最初からラインを超えそうな現場は着工時から台帳を整えておく」のが正解です。途中から慌てて再下請負通知書を集め直すのは、協力会社にも自分にも余計な手間です。
Q. JV(共同企業体)の場合
→ JVとしての取り扱いになります。スポンサー会社任せにせず、どちらの様式・システムで管理するかを着工前に決めておくのが実務のコツです。
「施工体制台帳作成建設工事の通知」とは
作成義務が生じた工事で、元請が下請に対して行う書面での通知です。「この工事は施工体制台帳の作成対象ですよ。再下請負が生じたら通知書を出してくださいね」と知らせるもので、あわせて現場の見やすい場所への掲示も必要です。
現場監督の実感として、これは安全パトロールや発注者の点検で意外と見られるポイントです。台帳そのものは整っているのに、掲示が抜けていて指摘される——朝礼看板まわりに掲示スペースを最初から確保しておくと忘れません。
いつ作る・どこに置く・いつまで保存する
作成タイミング:下請契約を締結したら遅滞なく。実務では一次下請の契約と同時に台帳の骨格を作り、再下請負通知書が集まり次第、綴じ込んでいく流れです。
備置き場所:工事現場ごとに備え置きます。発注者から施工体制の点検を求められたら応じる義務があります。
発注者への提出:公共工事は写しの提出が義務。民間工事は提出義務はありませんが、発注者から求められれば閲覧に供します。
保存期間:工事目的物の引渡しから5年間の保存が必要です(営業に関する図書として)。現場事務所を畳むときに廃棄しないよう、本社保管への引き継ぎまでが現場の仕事です。
台帳に綴じる書類一式(概要)
施工体制台帳は台帳本体だけでなく、下請契約書の写し、再下請負通知書、各社の許可証明などの添付書類とセットで初めて完成します。



添付書類の一覧と綴じる順番は、別記事で詳しく解説しています。


下請会社側がやることは2つ
ここまで元請目線で書きましたが、下請会社側の義務はシンプルで、求められるのは主に次の2つです。
- 再下請負通知書——自社がさらに下請に出したときに提出。書き方と記入例はこちらで徹底解説しています


- 作業員名簿——全建統一様式の名簿。マスター連動で自動入力できるテンプレートを配布・解説しています


よくある質問
- 作らないと罰則はありますか?
-
台帳の不作成・虚偽記載は建設業法違反として、国交省や都道府県からの指示処分などの監督処分の対象になります。罰金より怖いのは、監督処分歴が経審や入札参加資格に響くことです。
- グリーンサイトで作れば紙は不要?
-
元請がグリーンサイト等の電子システムを採用していれば、システム上での作成・管理で運用されるのが一般的です。ただし発注者の点検に応じられる状態にしておく必要はあるので、現場での出力・閲覧方法は確認しておいてください。
- 下請構成が変わったら差し替えが必要?
-
必要です。下請の追加・変更のたびに台帳と体系図を最新に保ちます。再下請負通知書の変更届とセットで動く話なので、変更届の運用はこちらの記事をどうぞ(変更届の解説セクションへ)。
- 施工体系図との違いは?
-
台帳が「詳細データ(各社の契約・技術者・保険情報の綴り)」、体系図が「相関図(下請構成を一枚で見える化した掲示物)」です。台帳から体系図を起こす関係になります。
- 金額はいくらからいくらに変わったのですか?
-
直近では令和7年2月に、4,500万円(建築一式7,000万円)から**5,000万円(建築一式8,000万円)**に引き上げられました。その前は令和5年1月に4,000万円→4,500万円の改正があります。
まとめ:迷ったら「下請の有無→公共か→総額」の順
- 下請なし→不要
- 公共工事→金額不問で必要(+発注者へ写し提出)
- 民間工事→下請総額5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)で必要
- このラインは特定建設業許可・監理技術者配置と同じ。1本覚えれば3つに効く



台帳の作成が決まったら、次は必要な書類を集めましょう。
下請さんに書いてもらう再下請負通知書の記入例・チェックポイントはこちらにまとめています。


▶ 安全書類の全体像は【保存版】グリーンファイル一覧へ








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